以前から気になっていたティム・バートン監督の映画『ビッグ・アイズ』
この映画は、実話を基に映像化した作品です。
本当に実話なのか信じ難い部分があるほど、見応えがある内容で面白かったです。
前半は、映画のあらすじや見どころを紹介します。
後半ではネタバレありの感想を書いているので、ご注意ください。
映画【ビッグ・アイズ】について
- 監督:ティムバートン
- 出演:エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァル、ツダニー・ヒューストン、テレンス・スタンプ
あらすじ(ネタバレなし)
映画の舞台は1950~1960年代のアメリカ。
BIG EYES(ビッグ・アイズ)シリーズという、哀し気で大きな瞳の子供たちの絵が世界中で人気になりました。
ウォルター・キーンという絵の作者が一躍アート界で有名人となり、富と名声を手に入れます。
しかし実際は内気で口下手な妻のマーガレット・キーンが全ての絵を描いていたことが判明。
一大スキャンダルに発展する…というお話です。
映画が作られた背景
監督はティム・バートンで、自身も「BIG EYESシリーズ」が好きだったことから映画化したようです。
ウォルター・キーンが作者といわれていたこのシリーズは、あのアンディ・ウォーホルも称賛を送っていたらしく、当時のアート界で大ブームになったそう。
映画の結末についてはここでは書きませんが、本当の作者であるマーガレット・キーンさんは現在も絵を描き続けています。
この映画化にあたって、ご本人がインタビューを受けていました。
マーガレット役のエイミー・アダムスやティム・バートン監督と一緒に並ぶ写真を見ると、優しそうでオシャレなマダムといった雰囲気で素敵です。
映画【ビッグ・アイズ】の見どころ
実在の人物を演じるキャストが良かった
主演はエイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツ。
エイミー・アダムスはディズニー映画『魔法にかけられて』のジゼル姫で有名な女優さん。
マーガレット・キーンの「絵を描くことは好きだけど自己主張は苦手」という感情が伝わってきて、最後までどうなるのか分からず、ハラハラしました。
そしてクリストフ・ヴァルツ演じるウォルター・キーンは、言葉巧みに人を操るのが上手い部分も憎たらしかった。
クリストフ・ヴァルツは、タランティーノ作品で2度アカデミー賞助演男優賞を取っている俳優さんなんですね。
この映画で気になったので、今度そちらも観てみようと思います。
50年代~60年代が見れる

1950~1960年代の映画や、その時代が舞台の映画を観るとウキウキしちゃう癖があります。
『ビッグ・アイズ』の洋服やメイク、ヘアスタイルはレトロで可愛くて、見ているだけで明るい気分になります。
私はヴィンテージの洋服や小物などが大好きで、好んで愛用していた時期がありました。
同じような趣味を持つ方なら、きっとこの映画は楽しめると思います。
あとは冒頭から街を走る車がたくさん出てくるので、たぶん車好きな人も楽しいかもしれませんね。
「昔のアメ車はキューバにあり」という映像を少し前に見たけど、まさにその車がたくさん走っている光景が見れます。
レトロヴィンテージ好きの方は、ストーリーとは違う部分でも楽しめる映画かもしれません。
映画【ビッグ・アイズ】ネタバレ感想
ネタバレしてる感想なので、これから見る人はご注意ください。
マーガレットとウォルターの出会い
マーガレットが娘を連れて泣きながら車を走らせる冒頭から、不穏な空気が漂っていました。
マーガレットは若い頃に絵を学び、その後すぐに結婚していたようで前夫との離婚後の就職活動も上手くいきません。
そんななか街角のマーケットのような場所で絵を描いて売ることになります。
娘ちゃんがいるのに街角で絵を安く売っている生活が大丈夫かな?と、まずは気になりました。
そして、横でたまたま風景画を売っていて出会ったのがウォルターなんですよね。
その時のウォルターの様子はこんな感じ↓
- 女性に囲まれて上機嫌のウォルター。
- そこそこ高い値段で絵を売ろうとしてるウォルター。
- どう見ても胡散臭さ丸出しのウォルター。
マーガレットとウォルターは、出会ってすぐに結婚しました。
・・・・・・・・・・・・・
・・・早すぎない?その結婚。
ウォルターって裏があるんじゃない?
大丈夫なの?マーガレット!!
「ウォルターは女たらしだって噂よ。」と、マーガレットを心配する友達の声も耳に入らず…っていうか入っても「お金あるし」とか言って、スルーするマーガレット。
マーガレットの苦悩
結婚後しばらくすると、マーガレットが描く「Keane」のサインが入った大きな瞳の子供たちの絵《ビッグ・アイズ》が少しずつ注目を集め出しました。
そこでウォルターは、ビッグ・アイズシリーズを自分が描いた絵として売り始めちゃうんです。
ここでマーガレットさんが自己主張したら良かったんだけど、並外れた押しの強さで捲し立てるウォルターを、内気なマーガレットに止められるはずもない。
マーガレットは子供を抱えたまま今の生活を抜け出すことも出来ず、ただ絵を描き続けることになっていきます。
そして随所に見られる、ウォルターの追い込み方がえげつない。
マーガレットの気持ちを無視して、言葉巧みに絵を描き続けるように誘導。
時には相当強い口調で言いくるめることもあり、洗脳のなんたるかを目撃したような気持ちになりました。
ウォルターの執念
それでも名声があるうちは、まだ調子良かったウォルター(マーガレットさんはつらそうだったけど)
ある時、万博での名声獲得に野心を燃やしたウォルターに頼まれて、渋々マーガレットが描いた大作がありました。
しかし、その絵が批評家にこっぴどく叩かれます。
ウォルターは「恥をかかせやがって!」と訳のわからぬ主張でマーガレットを責め立て、事態は急変。
シャイニングのジャック・ニコルソンばりにマーガレット親子を追いかけ回し、大暴れするウォルター(ホラー映画より怖い)
マーガレット親子はジャックニコルソンから逃れるため、ハワイに行きました。
裁判に発展
ついにマーガレットは立ち上がり、裁判になります。
それまで自己主張ができなかったマーガレットさんが裁判を起こすキッカケとして、宗教というキーワードも重要だったようです。
このことについては賛否両論あるようですが、考え方は人それぞれということで
「マーガレットさんにとっては、やっと自己主張ができるキッカケになったみたいです」
としか言えません。
そして、マーガレットさんとウォルターの関係をどう見るかで、この映画への意見は分かれるようです。
まず前提として、ウォルターのように商売上手なうえに図々しい人でないと、作品が有名にはならなかったかもしれません。
それなら、自己主張をせずに黙って従っていた人が悪いのか?ですよね。
「世間知らずのマーガレットもウォルターに依存していた」と感じるか。
「芸術の才能があり思い通りに動かせるマーガレットを利用したウォルターが悪い」と感じるか。
私の感想は、途中でマーガレットの自己主張なしの行動に対して
「ちゃんと考えてる?大丈夫?」
と疑問に感じることはあったけど、ウォルターの人間性がヤバ過ぎてそれを打ち消してしまいました。
ウォルターの富と名声への執念が半端ない!
あそこまで、執念深い人間がいることに驚きます。
最初は画家を挫折したから反動で名声を求めているのかと思ったら…絵すらまともに描いたことがないと判明したんで、驚愕しました。
(昔のデッサンもなく、絵の具の性質も知らなかったってことは、そういうことですよね?)
それにしても裁判のシーンはウォルターの一挙手一投足が演技掛かり過ぎて、実話なのか疑っちゃうほど。
「弁護士がいないなら、自分で弁護士役までやったる!」って、席を行ったり来たりして一人芝居を始めた時は、あの場にいた全員が戸惑ったに違いない。
ああいう演技掛かった行動や言動は、それまでの生活でもやっていたはず。
でも裁判というシチュエーションだからか、気合が入って、いつもより大げさになっちゃったんでしょうか。
裁判というシチュエーションに、酔ってるようにすら見えました。
しかし、ここまで盛大な嘘がずっと通るわけもありません。
裁判長に「実際にこの場で絵を描いてみなさい」と言われてからのウォルターのごまかし方もすごい。
芸術の女神を待つようなスタイルで目を瞑ってみたり、しまいには「腕がいてててて、筆が持てない」って言い出して、コントかよって笑っちゃいました。
2人のその後について
ウォルター氏はずっと「ビッグ・アイズは自分の作品だ」と言い続けたらしい…しかし新作は全く発表せずだったそうな。
なんか濃すぎる人物像で、フィクションのおもしろキャラのように映画の感想を書いてしまいました…
マーガレットさんは時が経ってから、ウォルター氏も本当はかわいそうな人なんだと語っていたようです。
でもティム・バートン監督のウォルター氏の描き方は、言い訳の隙も与えないほど強烈な人物像でした。今でも実話なのか疑っちゃうぐらい。
売れっ子アーティストになるには、やっぱり才能だけじゃ難しいんでしょうか。
いいコンビになることもあるし、全ての主従関係が悪いとは言い切れません。
しかし優柔不断で繊細で夢見がちでは、すぐに野心ある執念深い人に狙われる恐れもありますよね。
自己主張できたら絵なんか描かないよ!っていう、マーガレットさんの心の声が聞こえてくる気がしました。